サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

JA

【レポート】津野田圭~アーティスト・イン・レジデンス

体験する
会場
サントミューゼ

 

上田市内の小学校や公民館を訪れ、コンサートを行ったハープ奏者の津野田圭さん。普段なかなか聴く機会のないハープのソロ演奏は、多くの方を魅了しました。

8月から9月にかけて、神科・豊殿地域での活動をレポートします。

 

 

———————————————————————

8月30日(木)クラスコンサート at 上田市立神科小学校

 

5年生2クラスの子どもたちが拍手で迎えるなか登場した津野田さん。まず演奏したのは、アッセルマンが作曲したハープのための独奏曲「泉」です。
水がコンコンと湧き出る泉のゆっくりとした流れ、あるいは激しく波立つ様子など、水の動きを表現した曲です。

 

演奏後、津野田さんがハープについて説明してくれました。
「ハープは47本ある弦を、小指を除く左右8本の指で演奏します。足元には7本のペダルがあり、ドからシの各音と対応しています。踏み込む深さによって半音ずつ変わり、♯(シャープ)と♭(フラット)を弾き分けることができるのです。」

 

 

ハープを見るのも、音を聴くのもはじめてという子どもたちは、興味津々で話に聞き入りました。

 

次の演奏はグリンカの「ノクターン」。ノクターンとは日本語で「夜想曲」といい、楽しかったこと、あるいは誰かのことを夜に思い出す心を表現した曲なのだそう。「心の琴線に触れる」という言葉がありますが、ハープの音色は胸に秘めた人の想いと共鳴しやすいのかもしれません。

 

続いて、津野田さんがよく受けるという2つの質問に答えてくれました。

 

「どうしてハープをはじめたの?」という質問には、小学校2年生の時、ハープを習っていたおばあちゃんに「一緒に習おう」と誘われたのがきっかけだったこと。「ハープは自分で運べるの?」という質問には、ハープは重さが40㎏ほどあって、ひとりで運ぶことはできず分解もできないため、専門の業者に運んでもらうのだと答えてくれました。

 

コンサート後半、「ハープの体験をしてほしい」と津野田さんから提案があり、子どもたちがこぞって手を挙げます。

 

 

そして各クラスから選ばれた1名が、ハープの前に腰かけます。ハープを傾けて右肩で受け止めると「ちょっと重い」、ペダルを踏むのは「思ったより力がいる」、でも音を出すのは「そんなに難しくない」と、体験した子どもたちは感想を述べました。

 

 

 

ハープは誰でも簡単に音が出せること。弦はむき出しなので環境の変化にとても敏感で、演奏中にも音が狂ってしまうことなど、津野田さんが説明してくれました。

 

最後はトゥルニエの「朝に」が演奏されました。やわらかな日差し、頰にあたる風など、ハープの音色は自然の情景を豊かに表現します。子どもたちのあたたかな拍手に包まれて、クラスコンサートは終わりました。

 

 

 

——————————————————————————

9月1日(土)地域ふれあいコンサート vol.41 at 上野が丘公民館

 

珍しいハープのコンサートとあって、会場がいっぱいになるほどの多くのお客様が詰めかけました。

大きな拍手の中、ハープ奏者の津野田圭さんがステージに登場しました。

 

 

 

冒頭、アッセルマン作曲の「泉」を演奏した津野田さんは、

「皆さんのなかには、初めてハープの演奏を聴く方もいらっしゃるかもしれません。今日はハープの音色で特別な時間を作れたら」

とあいさつ。

 

その後、なかなか触れる機会がないハープについて解説してくれました。ルーツをたどると5千年前にさかのぼる歴史ある楽器であること。47本ある弦には、演奏者の目印としてドに赤、ファに黒の色が世界共通でついていること。毎回、1本ずつ弦をチューニング(調弦)していること。演奏中は見ることのできない裏側のペダルも特別に見せてくれました。

 

 

 

 

2曲目に演奏したのは、妻がハープ奏者だったというシュポアが作曲した「幻想曲」。時に哀愁を帯びたメロディーは、音の余韻の美しさも印象的です。

 

フランスの女性作曲家タイユフェールは、柔らかな楽曲から「音楽界のマリー・ローランサン」と例えられた人物。「柔らかさのなかに優しさや強さ、包容力を感じる曲です」と紹介したのは「ハープの為のソナタより 第1楽章」。音の粒が宝石のようにきらめいて響き、優しさの中に凛とした強さが感じられました。

 

続いてはピアノ曲をハープで。よく知られた美しいメロディーから始まったのはドビュッシー作曲「アラベスク 第1番」です。光の粒が降ってくるような澄んだ音色、そして低音も味わい深く、ハープ1台で多彩な音の表情を見せてくれました。

 

「ハープならではの奏法がたくさん出てくる曲です」と演奏したのは、トゥルニエの「朝に」。遠くから聴こえてくるようなかすかな音や、弦の中央を押さえるハーモニクス奏法による柔らかな高音、そして弦の上に指を一気に滑らせるグリッサンド奏法の華やかな音と、ハープの音色が持つ美しさも力強さも堪能させてくれました。

 

 

演奏を聴いたお客様は「生でハープの演奏を聴いたのは初めて。心がゆったりしました」「小学校でも演奏を聴きましたが、とてもきれいな音でした」と、ハープの音色の余韻を楽しみながら会場を後にしました。

 

 

 

【プログラム】

アッセルマン:泉 op.44

シュポア:幻想曲 op.35

グリンカ:ノクターン

タイユフェール:ハープの為のソナタより 第1楽章

ドビュッシー:アラベスク 第1番

トゥルニエ:朝に op.39

 

アンコール

ワトキンス:火の踊り