【レポート】宮田大 チェロ・リサイタル
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日本を代表するチェリスト、宮田大さん。ピアニストの西尾真実さんと共演する5月開催のリサイタルチケットは即日完売と、人気を物語りました。リサイタルに先駆けて、当日演奏する楽曲を解説するアナリーゼワークショップが開催されました。
アナリーゼワークショップ Vol.77~宮田 大(チェロ)
日時 2025年4月14日(月)19:00~
場所 サントミューゼ小ホール
お話 宮田 大
リサイタルをより深く楽しんでいただくために、公演で演奏される楽曲の魅力を演奏者が分かりやすくお伝えします。
楽曲からシーンや登場人物、色彩や香りをイメージする
この日のテーマは、宮田さんが大切にしている「楽曲からイメージするシーンや登場人物、色彩や光」というお話。プロコフィエフ作曲「チェロ・ソナタ」の楽譜に自身のイメージを言葉で書き込んだものを見せながら曲を聴いてみました。登場するのはわがままな王様に優しい王女、王政に怒る民衆。チェロの低い音は怒り、ピアノの穏やかな音色は王女との対話。民衆の宴をイメージした場面は、目の前に情景が浮かんでくるかのようです。

色彩や光のイメージも、同じ赤でも明るい色か血のような暗い色か。重い光か、レンブラントの絵画のような一筋の光か。「自分なりのイメージを膨らませて、一緒に聴いた人とディスカッションしてみてください」。興味深かったのは、滝廉太郎作曲「荒城の月」の山田耕作編曲版とオリジナル版の2つを演奏してくれたこと。感じる色彩や光のイメージが変化し、新鮮な感覚でした。
最後に「何も解説をしないので、想像してみてください」と、ソッリマによる現代曲「ラメンタチオ」を演奏。前衛的な音とリズムは、聴く人にどんなイメージをもたらしたでしょう。音から広がる情景や香りをイメージすることで、リサイタルをより深く楽しめそうです。

取材・文:石井妙子
宮田大 チェロ・リサイタル
開催日 2025年5月17日(土)
時間 14:00~
会場 サントミューゼ 小ホール
ピアノ 西尾真実
チェリスト宮田大さんのリサイタルは、西尾真実さんのピアノとともに、物語を感じさせる選曲で届けられました。大河ドラマ「べらぼう」の「べらぼう紀行Ⅰ」で注目を集める宮田さん。バルコニー席の奥まで満席です。
多彩な物語を紡ぐロシアの作曲家たち
温かいチェロの音色に包まれる「吟遊詩人の歌」からはじまり、2曲目は千夜一夜物語の「シェヘラザード」へ。時にふたりでオーケストラを再現するかのような表現力に圧倒されます。プロコフィエフの「チェロ・ソナタ」はもっともチェロの響きがよいと言われるハ長調。宮田さんが「音から多彩なイメージをもらう」と言うように、3楽章の中でさまざまな感情や場面が表現されます。


現代と古楽のイタリアの調べ
後半1曲目は『ニュー・シネマ・パラダイス』などのモリコーネの映画音楽をメドレーで届けます。夢心地の映画の世界から、抒情性たっぷりの古楽の世界へ。レスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲」の「シチリアーナ」は憂いを帯びたメロディを力強く奏でます。悲劇的な終曲を迎えると、熱い拍手が起こります。宮田さんが「弾くほうも聴くほうも大変なプログラム」と感想を言うと、西尾さんは「一緒に旅をしたようでした」と答えます。


チェロを習っている8歳の男の子は「『吟遊詩人の歌』がよかったです」と、伊那から一緒に来たお母様は「想像よりずっとまろやかな音で、生で聴けてよかったです」と感激した様子です。長野市の男性は「ピアノと息がぴったりでしたね。モリコーネのメドレーとアンコールの『Morgen!』が心に残りました」と話してくれました。
【プログラム】
グラズノフ/吟遊詩人の歌
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(山本清香 編)/シェヘラザード Op.35 より 「アラビアン・ウェーブ・ファンタジー」~チェロとピアノのための~
プロコフィエフ/チェロ・ソナタ
エンニオ・モリコーネ(山中惇史 編)/Morricone’s Cinema Medley
レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
【アンコール】
リヒャルト・シュトラウス/Morgen!(明日)
ファリャ/火祭りの踊り
取材・文:くりもときょうこ
撮影:齊梧伸一郎