サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館)

JA

【レポート】仲道郁代 ピアノ・リサイタル 関連プログラム

読了目安時間: 5分

みる・きく体験する

アナリーゼワークショップ Vol.79~仲道郁代(ピアノ)

日時 2025年9月13日(土)14:00~ 
場所 サントミューゼ小ホール
お話 仲道郁代

リサイタルをより深く楽しんでいただくために、公演で演奏される楽曲の魅力を演奏者が分かりやすくお伝えします。

ラヴェルの完璧な音の世界。その奥に宿る狂気を紐解く。

モーリス・ラヴェルという作曲家を語るうえで、完璧性・完璧主義という言葉がよく使われます。「あるべき音が寸分違わず存在。音の過不足がなく、非常に緻密に、精密に作られた音楽の中に、ラヴェルの狂気が潜んでいると感じます」と仲道さん。ラヴェル自らがデザインをしたという住まいの写真や自筆譜などからも、美意識の高さや完璧主義の側面が伝わりました。加えてリサイタルで演奏する曲から「水」「鏡」「鐘」という3つのキーワードに注目しながら、「ラヴェルの狂気」をテーマに解説しました。

「『水の戯れ』は、無限に変化し続ける水の動きや水というものが持つ様々な象徴を、有限な音符で完全に表現しようとする試みに執着のような狂気を感じます。

組曲『鏡』では、音という媒体を通して、私たちが知覚する現実を鏡のように反転させたり、鏡の中の世界に入り込んだりしながら、異質さや幻想が映し出されます。そこでは、私たちの中に潜む狂気が見せつけられるようにも感じられます。

『夜のガスパール』では、微妙に変化しながら執拗に反復する鐘を表す音が、避けられない破滅を予感させるような狂気が宿っていると思います。」と仲道さんは語ります。

洗練され、完璧な美しさを讃えるラヴェルの曲。リサイタル当日は、その裏側に潜む、聴き手の感情を揺さぶる狂気にも出会えるはずです。

取材・文:くぼたかおり