【レポート】徳永真一郎 ギター・リサイタル
読了目安時間: 5分
徳永真一郎 ギター・リサイタル
日時 2026年3月7日(土)14:00~
場所 サントミューゼ小ホール
ギタリスト徳永真一郎さんのリサイタルは、ギターの黄金期といわれる19世紀の作品と、20世紀フランスとスペインの作品で構成されたプログラムでした。

黄金期のヴィルトゥオーゾたちの作品
徳永さんはギターを捧げるように一礼して演奏をはじめます。ロマン派を代表するメルツの作品は当時流行した人気オペラの変奏曲。19世紀古典期のカルッリの作品は温かく耳なじみよく響きます。ユニークなタイトルの3曲目はドイツ民謡の素朴さの中に、ギターの華やかさと技巧が光ります。そして4曲目は、ショパンのマズルカを同郷ポーランドのギタリスト・ボブロヴィッツが編曲した作品。原曲に感じる冬の日差しのような温かくもどこか漂う哀感が、ギターによってより増すようでした。前半最後は情熱的なハンガリー幻想曲で超絶技巧が冴えます。

6本の弦が誘う豊かなギターの世界
後半1曲目、プーランクの作品はラストの開放弦が印象的でした。2曲目は20世紀最高のギタリスト、セゴビアに捧げられた曲。続く『暁の鐘』はトレモロの美しさが際立ちます。最後は、スペイン内戦で命を落としたホセの『ソナタ』です。「今回の公演が決まった時に、最初に選んだ曲です」と徳永さん。約20分、より深い集中で徳永さんは演奏に没頭します。アンコールでは、学校でのアウトリーチのためにギタリスト大坪純平さんに依頼した新作をリサイタル初演します。宇宙を感じる音色、トレモロ、ハーモニクス、弦やボディを叩くスラム奏法など、目に耳にギターの魅力を訴えかけてきます。拍手に押されるように大坪さんがステージに上がり、徳永さんと抱き合います。アンコール2曲目は興奮を慰撫するような『エストレリータ』でした。

お客様の感想です。徳永さんの地域ふれあいコンサートとアナリーゼに足を運ばれた女性ふたりです。「いろんな音色があってギターの魅力を味わえました。最後のソナタは印象に残る旋律がありました」。知り合いの方に勧められて来たという女性です。「徳永さんの演奏はとても気持ちよく聴くことができました」。

【プログラム】
J.K.メルツ:「ドン・ジョヴァンニ」の主題による幻想曲
F.カルッリ:「6つのアンダンテ op.320」より第2番・第3番
M.ジュリアーニ:「おいらはキャベツ作りの子」の主題による変奏曲
F.ショパン/J.N.ボブロヴィッツ編:4つのマズルカ op.6
J.K.メルツ:ハンガリー幻想曲
F.プーランク:サラバンド
D.ミヨー:セゴビアーナ
E.S.デ・ラ・マーサ:暁の鐘
A.ホセ:ソナタ
【アンコール】
大坪純平:Couleurs Étranges(奇妙な色彩)
ポンセ:エストレリータ
取材・文:くりもときょうこ
撮影:齋梧伸一郎
アナリーゼワークショップ Vol.82~徳永真一郎(ギター)
日時 2026年2月6日(金)19:00~
場所 サントミューゼ小ホール
お話 徳永真一郎(ギター)
リサイタルをより深く楽しんでいただくために、公演で演奏される楽曲の魅力を演奏者が分かりやすくお伝えします。
テンポで変わる表情に注目
レジデンスアーティストとして、上田市内の小学校でクラスコンサートを行ってきた徳永真一郎さんによるアナリーゼ。登場するや「コンサートより緊張しています」と話し、会場を笑いで包みました。

今回解説したのは、「今回のリサイタルでまず演奏したいと思いました」と語るA.ホセの大曲「ソナタ」。彼が生涯でたった二つだけ残したギター曲の一つです。自筆譜をモニターに映し、徳永さんが演奏した音源を聴きながら曲の構成をたどりました。

ソナタ形式を取りつつ複雑な構成の1楽章。違うリズムなど新しい要素が次々と現れ、その度にシーンが切り替わる様子が印象的です。「新しい要素が現れても一体感を生むために、シーンを貫くテンポが大切です」と徳永さん。

4楽章では1楽章の主題がコラージュのように切り貼りされ、多様な形で再び登場します。ここでもテンポが重要で、4楽章は1楽章に比べて非常に速いため「走馬灯のように過去を早回しで振り返るよう。ドラマチックですよね」。速いテンポは技巧で魅せる部分も多く、リサイタルが楽しみになりました。
取材・文:石井妙子
徳永真一郎 クラスコンサート
日時 2026年1月16日(金)
場所 上田市立塩田西小学校
徳永真一郎(ギター)
クラシックギター奏者の徳永真一郎さんは2025年度のレジデント・アーティストのおひとりです。塩田西小学校5年生のクラスコンサートの模様を取材しました。
ギターの多彩な表情をたっぷり味わう
5年生37名の拍手に迎えられた徳永さんは、まずはギターの説明から始めました。クラシックギターは、少し伸ばした右手の爪で6本の弦を弾きます。1曲目の『ソナチネ』が終わると、先端のねじを回して一番低い音の弦の音程を変えました。「ギターの故郷・スペインのカタルーニャ民謡の『盗賊の歌』には、鐘の音を表現する『ハーモニクス』という奏法が出てきます」。独特の高音が心地よく響きます。

続いては、ギターの名曲のひとつ『アルハンブラの思い出』。ギターは音がすぐに消えてしまうため、同じ音を繰り返し素早く弾いて長音のように聴かせる「トレモロ奏法」が編み出されました。トレモロ奏法のメロディを試しに弾いてみた徳永さんに「感じが分かりますか?」と尋ねられた子どもたちは、うんうんとうなずきます。伴奏も弾いてみて、いざ曲へ。確かにメロディと伴奏が聴こえますが、手の動きは目にもとまらぬ速さです。
スペインの3拍子の舞踊音楽「ホタ」をベースにした『グラン・ホタ』では、次々に飛び出すユニークな奏法や音に子どもたちが反応していました。

徳永さんのギターを弾かせてもらう
ここで、徳永さんから「弾いてみたい人はいますか?」と思いがけない提案が。立候補した男の子が右手で3弦を繰り返し弾いて、徳永さんが弦を押さえていくと……映画『禁じられた遊び』のテーマ曲です。最後、男の子が「ジャン!」とかっこよく弦を鳴らしました。もうひとり弾いてみた男の子は、弾くと体にギターの振動が伝わって「震える感じがします」と驚いていたようでした。5曲目は先ほどの『禁じられた遊び』のテーマ『愛のロマンス』。徳永さんの演奏が、耳慣れた曲に新鮮な美しさを吹きこんでいました。

6曲目は、徳永さんがフランス留学時に師事していたディアンスの『タンゴ・アン・スカイ』。スカイは合成皮革のこと。タンゴの本場であり革製品で有名なアルゼンチンに引っ掛け即興でつくられた曲は、非常に洒脱でギターらしい味わいが隅々まで感じられます。
最後の質問タイムでは、次々と手が挙がりました。「弦の材質は何ですか」「弦の長さを変えるねじはなぜ横についているんですか」「エレキギターとはどう違うんですか」「そんなにうまく弾けるまで何年かかりましたか」「そのギターはどこで手に入れましたか」など、鋭くストレートな質問が飛びます。徳永さんは、釣り糸やリールにたとえて説明したり、自身は徳島出身でギターもさまざまな国から来た木を使って徳島でつくられたものと答えたりして、子どもたちとの距離がさらに縮まったようでした。

【プログラム】
パガニーニ:ソナチネ ハ長調
カタルーニャ民謡:盗賊の歌
タレガ:アルハンブラの思い出
タレガ:グラン・ホタ
作曲者不詳 :愛のロマンス
ディアンス:タンゴ・アン・スカイ
取材・文:くりもときょうこ
撮影:齋梧伸一郎