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【レポート】廣田美穂アーティストインレジデンスin城南・塩田地域

体験する

ソプラノ歌手・廣田美穂さん
廣田美穂アーティストインレジデンスin城南・塩田地域

 

9月10日(土)に小ホールでリサイタルを開催するソプラノ歌手の廣田美穂さん。

リサイタルに先駆けて、6・7月に開かれた活動を紹介します。

 

【6月の活動】

24日(金)午前
『クラスコンサート』at 上田市立南小学校

 

ソプラノ歌手の廣田美穂さんと、ピアニストの岩崎香織さん。

音楽室に颯爽と入ってきた2人の姿を南小学校5年生の児童たちは、少し緊張した様子で迎えました。

 

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ヘンデル作曲の「オンブラ・マイ・フ」を披露した後に、あらためて自己紹介をし、1曲目がイタリア語で歌われていることを説明。

「今いる音楽室でも、イタリア語はよく使われているんです。知っていますか?」と問いかける廣田さんに、1人の児童が「ドレミファソラシド!」と答えます。

そう、実はドレミ~の音名は、イタリア語なのです。

廣田さんは、それを知っている児童がいたことにおどろいた様子。

 

ほかに知っている言葉はと問いかけると、「チャオ!」など元気よく返答する児童もいました。

 

「次はドイツ語で歌います。この曲を作ったシューマンが、後の妻となるクララに捧げた歌です。彼女への愛が歌われていて、歌詞には「ドゥ(あなた)」と「マイエ(私)が何度も出てきます。たくさんの愛を感じながら聴いてください」と、シューマン作曲「献呈」へ。

表情豊かに歌う姿を見ていると、すべての歌詞の意味は分からなくても、感じ取ることができます。

 

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その後は「赤とんぼ」と唱歌メドレー「ふるさとの四季」と日本の唱歌を披露。児童たちに馴染みがある曲ゆえ、一緒に歌ったり、この曲は何だったかな?と確認したりする姿が印象的でした。
「上田市には、すぐそばに山や川など豊かな自然があります。美しい四季を感じることができて素晴らしいですね」と廣田さん。

 

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6曲目にはまどみちお作詞「音楽」を披露し、歌詞にあるように音楽を五感で楽しんでほしいという想いを廣田さんの歌で伝えていました。

なかには歌詞にあるように目をつぶってみる子、耳をふさいでみる子もいました。

 

 

聴いているだけでは……ということで、7曲目は児童63人全員と「翼をください」を合唱。

歌い終えた後、廣田さんは「少し練習して、もっと声が出るようにしよう」と提案しました。

 

歌う前の姿勢では、ぐっと背伸びをしてバストトップを上がったようにすること、歌う時には大きなハンバーガーを食べる時のように口を広げること、声を出す時には遠くへ届けるようになどのアドバイスをして再度合唱。

すると1回目に歌った時よりもはるかに声量があり、伸びやかで、歌っている児童たちも気持ち良さそうな印象でした。音楽室からはみ出るほどの美しい歌声に、指導した廣田さん自身も感激した面持ちでした。

 

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岩崎さんのリズミカルなピアノの旋律に合わせて、廣田さんが実際に鏡を持ち、化粧をしたりなどの演出をしながら歌う姿が印象的な「うぬぼれ鏡」を披露。

オペラの舞台が音楽室に来たかのような雰囲気を醸し出していました。

 

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「機会があったら、ぜひオペラも観賞してください」というメッセージを残して、情熱的なメロディーと歌声が印象的なスペイン民謡「エルビート」で締めくくりました。

 


 

 

24日(金)午後
『ミニコンサート』at さくら国際高等学校

 

同日午後には、「信州の鎌倉」と称される塩田地区へ移動してさくら国際高等学校の生徒約100人が参加し、ミニコンサートを開きました。

この日を楽しもうと先生の発案で、本物のコンサートのようにコンサートチケットを準備して生徒たちに配布。

会場となる体育館に入る時にはもぎり担当がいて、チケットと引換えにこちらも学校側で作ったプログラム等が書かれたパンフレットを配布。

 

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パンフレットには「身近な空間でプロの演奏家の演奏を聴くことのできる貴重な機会です。聴きながら生まれてくる感性や想像力を、ぜひ大切にしてください」と書かれ、「聞く」ことと「聴く」ことの違いなどが書かれていました。

そこには夢や目標に向かって努力し、達成してきた廣田さんや岩崎さんの歌や演奏から何かを感じ取ってほしいという先生の想いが含まれているようでした。

 

コンサート数分前、コンサートホール同様に生徒が開演前のアナウンスをして、廣田さん、岩崎さんの登場を待ちます。

 

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1曲目は午前と同様に『オンブラ・マイ・フ』から披露し、大勢いる観客一人ひとりに話しかけるようにあいさつ。

廣田さんがオペラを観た経験がある人はいるか問いかけると、全校生徒のなかには松本市や海外でオペラを観た経験がある生徒がいることにおどろく一面も。
つづいてプッチーニ作曲のオペラ『ジャンニ・スキッキ』より『私のお父さん』を歌いました。

その後、オペラについて廣田さんからお話がありました。

「オペラが出来たのは、1600年頃。日本では関ヶ原の戦いがあったころです。そのはじまりは古代ギリシャ劇を復興しようという動きから生まれていきました。宮廷から始まったオペラはやがて劇場で上演されるようになり、大衆の人気を得るようになったといわれています。」

 

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話を終えた後には、シューマン作曲「献呈」、グラナドス作曲のオペラ『ゴイェスカス』より マハと夜鳴き鶯へ。

演奏中は鶯の鳴き声をピアノで再現するなど、廣田さんの声に伴奏が美しく合わさり、さらには会場の外からも鳥のさえずりが聞こえたのが印象的でした。

 

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その後は廣田さんがイタリアへ留学した当時のエピソードが披露され、言葉が分からなかったためお金を下ろすのもひと苦労だったとか。

また「長調」「短調」のイタリア語も最初分からず、台湾人の同級生にいろいろな事を教えてもらいながら勉強したそうです。

 

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つづいてラヴェル作曲「ハバネラ形式によるヴォカリーズ」、グノー作曲オペラ『ファウスト』より『宝石の歌』、そして廣田さんが大好きだというシェーンベルク作曲ミュージカル『レ・ミゼラブル』より『夢やぶれて』を披露しました。

「私は現在独身なので、これを歌って喝を入れています」との廣田さんの言葉には、それまで真剣に聞いていた生徒たちも、思わず笑顔に。

 

まるで音楽でヨーロッパを巡るようにして各国の曲を歌い、最後は唱歌メドレー「ふるさとの四季」を披露して終了。

生徒たちからは「音楽が大好きなので、今日のコンサートを終えてその気持ちが深まった」など、ふだんとは異なる体験を楽しんだ様子が伺えました。

 

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【7月の活動】

22日(金)
サントミューゼアナリーゼ(楽曲分析)シリーズVol.11 at 城南公民館

 

今回のテーマはオペラ。

廣田さんは発祥の地イタリアに留学経験があり、そのときの体験も交え、解りやすく解説します。

会場は翌日にコンサートを行う城南公民館。

サントミューゼ以外の会場で行われたのはアナリーゼとして初の試みです。

 

 

 

当日は地元のお祭りがあったにも関わらず多くの人が訪れ、約1時間のアナリーゼに耳を傾けました。

ピアノの岩崎香織さんとお二人で登場した廣田さん。ステージではなく客席と同じフロアに座り、親しみある雰囲気でお話が始まりました。

 

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前半は、廣田さん手書きの地図を見ながらオペラの歴史を紐解いていきます。

 

芸術の都フィレンツェでオペラが誕生したのは1600年代。日本は江戸時代に入った頃だと言いますから、とても長い歴史です。

オペラ史の中でも興味深かったのが、1900年代初頭まで存在したというカストラート(去勢した男性ソプラノ歌手)のエピソード。

「どこか不思議な感じというか、同じソプラノでも女性歌手より声に力があるんです。今も音源が残っていますので、ぜひ聴いてみてくださいね」。

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そして話題は『蝶々夫人』に。「プッチーニのオペラには、悲劇的な女性を描いたものが多いんです。そういう女性が好きなのでしょうか」

異国の文化を好んだ彼は、『蝶々夫人』に日本の音楽を取り入れたいと、当時の在伊日本大使夫人の大山久子さんに民謡や長唄の楽譜をもらったり、フレーズを教えてもらったりしたそう。

 

 

後半は、その『蝶々夫人』から日本のメロディーを取り入れたフレーズを紹介。

参加者は、『愛の讃歌』『お江戸日本橋』など元になった楽譜の資料を見ながら耳を傾けます。廣田さんはどのフレーズがどの場面で使われたか、あらすじを追いながら歌を披露。

廣田さんの美声が聴き手の体の芯まで響き、会場の空気が一気に華やぎます。

 

 

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面白いのが、プッチーニが原曲の音源を入手できたか、メロディーで聞いたのみかによって取り入れ方が違うこと。

たとえば、アメリカ海軍士官と結婚した主人公の日本人女性、蝶々夫人が、芸者になった自身の身の上を明らかにする場面では、長唄『越後囃子』が使われています。

 

プッチーニは原曲の楽譜を入手して読み解いた上で作曲を行ったそうで、実際に聞くと元のメロディーがはっきり分かるように組み込まれています。

一方、子どもの登場シーンで使われた子守唄『豊年節(かっぽれ)』は、どことなく雰囲気が似ている程度。「この曲は、当時楽譜を入手できなかったとされています」と廣田さん。エピソードと合わせて聞くことで、プッチーニの創作過程が垣間見えるようでした。

 

 

『蝶々夫人』の曲は、廣田さんによる翌日の「地域ふれあいコンサート」や9月10日のリサイタルのプログラムにも入っています。アナリーゼで知識を深めたことで、さらに楽しめることでしょう。

 


 

 

23日(土)
ワンコイン地域ふれあいコンサートVol.22 at 城南公民館

 

 

「今日のプログラムは夏の曲を選びました」と話す廣田さんは、ピアノの岩崎さんともに浴衣で登場。

廣田さんの紺色の浴衣は、中学生の時に自身のおばあさまが縫ってくれたものだそう。

ステージではなくお客様と同じフロアに立ち、アットホームな雰囲気でコンサートが始まりました。

 

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最初の曲は、ヘンデル作曲『オンブラ・マイ・フ』。

 

日本語で「樹木の陰で」と訳されるこの歌は、伸びやかな歌声が外の暑い日差しを忘れさせるようでしたが、「さすがに浴衣で歌うとちょっと暑いですね」と苦笑い。

 

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前日のアナリーゼで紹介したオペラ『蝶々夫人』からは2曲を披露。

豊かな声と表情で蝶々夫人の思いをあふれんばかりに表現する歌に引き込まれます。

「オペラの蝶々夫人役は舞台に出ずっぱりで、しかも衣装が着物だから大変なんです。でもいつか演じてみたいですね」と廣田さん。

 

続いては日本の歌です。

なかでも『ふるさと』に始まり『夏は来ぬ』『雪やこんこ』と続く唱歌メドレーは親しみ深く、体を揺らしてメロディーに浸るお客様も。

「唱歌は日本語の美しさを再確認させてくれます。最近はあまり学校で歌われないようで寂しい。こうした地域コンサートでは、次世代に歌い継いでいきたい歌を選ぶことが多いですね」と廣田さん。

山や川が美しい上田の自然は、唱歌が描く日本の原風景に通じると感じるそうです。

 

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ここからは雰囲気を変え、まずは中田喜直作曲の『サルビア』へ。

「夏になると歌うんです」と話すこの歌は、情熱的な女性の恋の歌。

サルビアの花の色を血の色に見立てた歌詞、美しく激情的な歌声に圧倒されました。

 

続く平井康三郎作曲『うぬぼれ鏡』では、小道具の手鏡を片手に、鏡の自分に酔いしれる仕草を交えながら可愛らしい女心を聴かせます。

 

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いずれも浴衣ゆえの女性らしい所作が印象的で、アンコールの2曲も含め、今日のテーマ「夏の歌」を表情豊かに楽しませてくれました。

 

 

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