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【レポート】飯森範親アナリーゼ(楽曲解析)ワークショップ Vol.49 

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4月12日(月) 19:00~ at サントミューゼ小ホール

 

サントミューゼとも縁が深い群馬交響楽団。来る5月23日、大ホールで「上田定期演奏会 ー2021 春ー」が行われます。曲目の一つが、マーラーの「交響曲 第5番 嬰ハ短調」。この日は演奏会に先がけて、マーラーの人生や交響曲が生まれた背景を解説するアナリーゼが行われました。

 

お話は、5月23日に指揮を務める飯森範親さん。ドイツで研鑽を積み、国内外のオーケストラで活躍するマエストロです。

 

飯森さんが最初に見せてくれたのは、マーラーが交響曲を作曲した場所を自身が訪ねた時の写真です。第4番と第5番が生まれたのは、オーストリア東端にあるヴェルターという湖のほとり。1899〜1902年のことです。切り妻屋根のかわいらしい小屋が、今も残されています。

 

 

 

自然豊かな環境で創作された交響曲。その中でも、第5番は「非常に重要なんです」と飯森さん。楽譜をスクリーンに映しながら解説してくれました。

 

「1901年夏、マーラーはあの小屋で第3楽章までを書きました。その年の11月、彼は22歳の女性アルマと出会い、恋に落ちた。当時マーラーは41歳。大スターだった彼の猛烈なアプローチで二人は翌年結婚し、アルマは妊娠します。第4楽章は彼女のために書かれたとされ、この曲でプロポーズしたのではないかと言われています」

 

この曲を「ユダヤらしい」と話す飯森さん。実際にフレーズの一部を弾いてくれました。「明るいハーモニーだけれどどこか悲しみがこもっています」と解説してくれました。ユダヤ人のマーラーは、ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督とウィーン・フィルの首席指揮者を務めるためユダヤ教から改宗しますが、やはり血はユダヤ人だからこそ、自然と旋律に反映されたのでしょうか。

 

第2楽章ではユダヤらしいメロディーが異常なほど激しく登場しますが、「マーラーは幼少期、ユダヤ人だからと差別された体験がありました。だからこそ、こうした表現をしているのかもしれません」と飯森さんは話します。

 

随所にベートーヴェンの影響を感じるフレーズがあるのも特徴です。第1楽章の最初のフレーズは「運命」を思わせるほか、「葬送」と似ている部分もあります。その部分の楽譜を追いながら、実際にピアノで弾いてくれました。

 

 

 

「マーラーにとって、ベートーヴェンは偉大な存在でした。交響曲第2番を書くのに膨大な年月を費やしたのは、ベートーヴェンを超えたかったからだという本人の言葉も残っています」

 

第1楽章は葬送のテーマで「運命を引きずること」を示し、転調して喜びと悲しみが表裏一体にあるユダヤのメロディーへ。「悲しいけれど前を向かなければ」という複雑な思いを示したのち、トランペットのメロディーで悲しみがこみ上げ、さらに激情のような弦楽器へと続きます。

 

「第1楽章の最後の音は、譜面ではピチカートですがフォルテで演奏する人もいます。私も、毎回変えています。今回の上田の演奏会、私はどちらでやると思いますか?・・・内緒です」

 

飯森さんがそう言って笑うと、会場内にも笑い声が広がりました。

 

第2楽章の特徴の一つが、1番ホルンがソロのように指揮者の隣で演奏する部分です。ホルンは本来、狩りで「獲物がいたぞ!」と後ろに伝えるための楽器。そのため、ベル(音が出る部分)が後ろを向いています。

飯森さんはこの曲でも、1番ホルン、2番ホルン、3番ホルン・・・と順に伝えるように続き、それを受けて1番ホルンがソロで演奏するイメージを描いているのだそう。

 

第4楽章では、優れた作曲家でもあった妻アルマの進言によって書き替えたとされるテーマ部分の自筆譜面を紹介してくれました。さらに、実際にピアノでその部分を弾いて比較してくれます。

 

 

 

「音が上がっていますね。この曲はワーグナーのオペラ『トリスタンとイゾルデ』の前奏曲に似ているのですが、そのオペラでは最後に愛が死んでしまう。それを知っていたアルマは『音を上げることで、愛が成就するようにした方がいい』とマーラーに進言したと言われています。4楽章には、アルマもかなり入り込んでいるのではないでしょうか」

 

公私ともに絶頂期で幸せだったマーラーが書いた交響曲第5番。飯森さんはどんな演奏を聴かせてくれるのでしょうか。楽しみが増すアナリーゼとなりました。

 

 

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第568回 群響定期演奏会プログラム 群馬交響楽団 上田定期演奏会-2021 春-の公演情報は、コチラ

 

 

 

講師紹介

飯森 範親 Norichika Iimori (Conductor)

桐朋学園大学指揮科卒業。国内外のオーケストラを数多く指揮、東京交響楽団正指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、ドイツ・ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽総監督(GMD)として活躍。 2014年シーズンから日本センチュリー交響楽団首席指揮者に就任。07年より山形交響楽団音楽監督、2019年シーズンから同楽団芸術総監督に就任。2020年1月より東京佼成ウインドオーケストラ首席客演指揮者、同年4月より中部フィルハーモニー交響楽団首席客演指揮者に就任。
オフィシャル・ホームページ http://iimori-norichika.com/

飯森 範親 Norichika Iimori (Conductor)