概要
2023年度「第48回全国大学版画展」から、今回で3回目の開催となる企画。
「全国大学版画展」参加大学から選抜された新進作家5名が、美術館2階プロムナードの小スペースを使ってそれぞれの展示を展開します。
個性ほとばしる若手アーティストたちの展示は一見の価値ありです!
日時 11月29日(土)〜1月12日(月) 9:00〜17:00 (最終入場は16:30まで)
会場 美術館2F プロムナード
出展作家
柏木 優希 Yuki Kashiwagi

水性木版画という伝統的な技法を基盤に、レーザー加工やデジタル画像処理を取り入れて制作を行っています。画面に刻まれるピクセルや線はデジタルデータの痕跡ですが、版木を彫り、和紙に摺るという身体的な工程を経ることで、再び物質として立ち上がってきます。その過程で生まれるわずかなずれや重なりには、制御しきれない偶然や、素材が答える微妙な感触のようなものが現れます。そうした行為の積み重ねを通して、デジタルと手作業のあいだに生まれる新しい造形の可能性を探り、表現を模索しています。
<略歴>
1991 静岡県生まれ
2014 武蔵野美術大学油絵学科版画専攻 卒業
2016 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース 修了
2020-2022 武蔵野美術大学通信教育課程研究室 助教
2022-現在 桐生大学短期大学部アート・デザイン学科 助教
<主な発表歴>
2024年 第14回大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ(大野城まどかぴあ、福岡)
2024年 第9回 山本鼎版画大賞展(サントミューゼ 上田市立美術館、長野)
2024年 アートプロジェクト高崎(高崎中心市街地、群馬)
2025年 IRODORI 日本とインドの版画交流展 (YUKI-SIS、東京)
2025年 柏木優希個展(ギャラリー子の星、東京)
2025年 路地まちアートランブル2025/Storytelling Memories ― ストーリーテリング メモリーズ ― 時を織る街 ―(足利商工会議所友愛会館 市民ギャラリー、栃木)
加藤 万結 Mayu Kato

シルクスクリーン
W 330mm × H 480mm
“存在をなぞる”という言葉をテーマに、少女や景色を構成し、シルクスクリーンなど版画を用いて表現する。 “存在をなぞる”とは、画…面や紙という二次元の世界に彼女たちが実在したならば、と自身の記憶や景色の中へと落とし込み、鉛筆のドローイングと写真を組み合わせることで、少女の存在する景色を表現することである。それは日常の景色で、不意にみたときに思い出す朧気な記憶、残像である。 版画で制作していることは、直接描く絵画とは異なり、いくつもの工程を挟むことで、少女の存在が自分にとって遠いところにあることを表している。 特にシルクスクリーンでは、版を解体(解版)する為、版が残らない。紙の上に刷られた彼女たちがインクの残像としてだけ残る。私と少女の間では、距離が縮まらない追いかけっこをしているように感じている。
<略歴>
2020年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻 卒業
2022年 武蔵野美術大学大学院修士課程造形研究科美術専攻版画コース修了
2022年 武蔵野美術大学グラフィックアーツ/版画研究室 教務補助員
2024年 武蔵野美術大学グラフィックアーツ/版画研究室 助教
<主な発表歴>
2025年 個展「解体される時を刻む」(aL base,東京)
2024年 グループ展「舞踏会」(小金井シャトー, 東京)
2021年 個展「囲」 (新宿眼科画廊, 東京)
田島 恵美 Megumi Tashima

リトグラフ
H 330mm × W 520mm
普段の生活、日常で起きる出来事、人との繋がりのなかにある人のおもいに視点を向け描いています。おもいは目には見えずとも常にあり、潜んでいて、変化し、全てを知ることができないものです。全てを知ることができないからこそ気になる存在で知りたくなってしまう。そして分かりたいとおもう。でも全てを知ることができないから分からないから不気味な部分もあるのだとおもうのです。私の出会う日常のなかにあるおもいたちを描けたらとおもいます。
<略歴>
2011 福岡教育大学教育学部生涯スポーツ芸術課程美術領域 卒業
2013 九州産業大学大学院芸術研究科博士前期課程美術専攻 修了
2021~九州産業大学芸術学部 印刷版画助手
<主な発表歴>
[個展]
2024
「日常に揺蕩う」gallery hydrangea(東京)
2023
「aワせ鏡」Gallery URO(大阪)
2022
「田島惠美作品展」Gallery TK2/インターアート7(東京)
2020
「潜むもの」EUREKA(福岡)
中村 花絵 Hanae Nakamura

シルクスクリーン
H 180mm × W 230mm

わかりやすさが求められる時代だからこそ、あえてわかりにくいイメージを制作してみた。出品作の「Bits and Pieces」シリーズは、シルクスクリーンプリントを介して生じる現象を頼りに、もとより曖昧な像をより不確かなものにしていくことを試みている。
印刷物の基本色CMYKの版を規則的に並ぶ網点にそれぞれ変換し、パール顔料を含んだ淡い色で何度も繰り返し印刷していく。この単純な工程から、パール顔料による反射作用/僅かな印刷のずれで発生するモアレ/インクの積層で築かれる隆起などの要素がイメージに加わる。これらの不安定な材料を掛け合わせることで像の揺らぎを煽っている。
版による偶発的なエラーに助けられることもあれば見放されることもあった。版とのやりとりはシンプルにみえて極めて複雑である。
<略歴>
1990年 北海道網走郡生まれ
2015年 女子美術大学大学院美術研究科修士課程美術専攻版画研究領域修了
<主な発表歴>
2018 現在への起点 ―女子美収蔵作品を中心に― (女子美術大学美術館)
2018 Who are you? 松浦進 × 中村花絵 Contemporary Print Exhibition(網走市立美術館)
2022 帯広美術館開館30周年記念 道東アートファイル2022+道東新世代(北海道立帯広美術館)
2023年 May I have a large container of coffee ?(福沢一郎記念館/世田谷)
2025年 Full of Ambiguity(GALLERY IRO/吉祥寺)
日高 衣紅 Iku Hidaka

スクリーンプリント
H 188mm × W 254mm × D 20mm
昔、骨董品店で働いていたことがある。寺社で頒布された御札や古書店で手にした版本などのインクのかすれやにじみを見るのが好きだった。人の手による摺り跡や機械の誤差で生じた紙の不均一な表情に、印刷に携わった人の存在やその場所の歴史を感じ取ることができるからだ。
今でも骨董市や古書店に通い、古い印刷物を収集している。好奇心に駆られ、それらが印刷された土地を訪ね、関わった人々や背景を調べることもある。こうしたフィールドワークが今の制作につながっている。
収集やリサーチした印刷物をモチーフに、シルクスクリーンで数百層のインクを手で摺り重ねる。重なりや崩れゆく造形を通して、印刷物と共にあった人や場所の記憶を表している。
<略歴>
2012 多摩美術大学 絵画学科 版画専攻 卒業
2018 筑波大学大学院 人間総合科学研究科博士前期課程 芸術専攻 修了
2024 筑波大学大学院 人間総合科学研究科博士後期課程 芸術専攻 単位取得満期退学
2022〜筑波大学 芸術系 特任研究員
<主な発表歴>
【個展】ギャルリー東京ユマニテbis(東京)、南島原市アートビレッジ・シラキノ(長崎)、Centrum Gallery(ポーランド)
【グループ展】田口美術(岐阜)、渋谷ヒカリエ 8/cube(東京)