【レポート】東京交響楽団 上田特別演奏会
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東京交響楽団 上田特別演奏会
- 開催日
- 時間
- 15:00~
- 会場
- サントミューゼ 大ホール
指揮:スザンナ・マルッキ
管弦楽:東京交響楽団
首都圏を拠点とする東京交響楽団がサントミューゼに初登場しました。確かな実力と伝統に根差した多彩な活動で高く評価され続ける一方、オンライン配信やVRオーケストラなどの進取の気風に富む面も持ちます。指揮はフィンランド出身のスザンナ・マルッキさん。ロサンゼルス・フィル首席客演指揮者など国際的に活躍し、現代音楽を得意としています。
演目はベートーヴェンの「交響曲第6番『田園』」とストラヴィンスキーの「春の祭典」で、自然を共通点としながらも対照的な2曲がどう表現されるのか、客席は期待で満ちていました。

みずみずしく明晰な「田園」
「田園」の第1楽章は速めのテンポで、青々とした田畑に爽やかな風が吹き渡る、春から初夏の田園風景が想起されます。マルッキさんの指揮は、音楽が向かおうとする先を指し示すような明晰さがあります。第2楽章「小川のほとりの情景」は8分の12拍子のゆったりとした流れに、小川のせせらぎや鳥のさえずりが交じります。管楽器の色彩豊かな第3楽章「田舎の人たちの楽しい集い」から一転、第4楽章「雷雨、嵐」は低音部とティンパニの迫力が際立ちます。第5楽章「羊飼いの歌、嵐の後の喜びと感謝の気持ち」で再び穏やかさを取り戻し、ホルンの温かな音色が余韻を残しながら終わりました。

「春の祭典」は120名超の迫力ある演奏に
「春の祭典」はバレエ音楽で、古代ロシアの異教徒たちが乙女をいけにえにするイメージから斬新な音楽と振り付けを生み出し、初演時に賛否両論を呼んだ作品です。舞台には120名を超える奏者が並び、ワーグナーチューバやアルトフルート、バスクラリネットなど管楽器の多彩さに目をみはります。第1部「大地礼賛」はファゴットのソロによる「序奏」から。弦楽器の力強い和音ではじまる「春のきざし」から進む物語は第2部最後の「いけにえの踊り」で極まり、変拍子の組み合わせと複雑なリズムで死ぬまで踊る乙女の狂乱を描き幕切れへ。さまざまな楽器が印象的な音の重なりを生む中、マルッキさんはこの曲が持つ複雑さと多層性を丁寧に解きほぐし、正確でコントラストのはっきりした「春の祭典」を表現していました。

時代も様式も異なる2つの曲を味わう
4回のカーテンコールにマルッキさんは笑顔で応えます。長野市から家族三世代で来た高校1年生の女性は「クラシック音楽に興味があって、初めて聴きに来ました。迫力がすごくてよかったです」と話してくれました。家族3人で来た女性は、「珍しいプログラムに惹かれました。2つのコンサートを楽しんだ気分です」と笑顔で感想を伝えてくれました。一緒に来た小4のお子さんは「春の祭典」が気に入って、「すごく楽しかったです」と教えてくれました。

【プログラム】
ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 op.68「田園」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
取材・文:くりもときょうこ
撮影:齋梧伸一郎