サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館)

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【レポート】高校生と創る実験的演劇工房 12th『ボクと彼女の、花。』『やじろべえ。』

読了目安時間: 7分

つながるみる・きく体験する

作・演出・監修・指導:守田慎之介(演劇関係いすと校舎代表)

開催日
会場
サントミューゼ 大スタジオ

上田市内の高校演劇部(班)の生徒たちとプロの演出家が創作に挑む「高校生と創る実験的演劇工房」。12年目の今回は、5年目と11年目に続いて劇作家・演出家の守田慎之介さん(演劇関係いすと校舎代表)を迎えました。今回参加したのは、上田高校、上田染谷丘高校、丸子修学館高校、蓼科高校の生徒12名。2日間2公演のうち、初日の模様をお伝えします。

人生のさまざまな場面を花でつなぐ

『ボクと彼女の、花。』は、演者たちが童謡『みかんの花咲く丘』を歌いながら登場するところから始まります。

小学校の休み時間、花壇のそばで手遊びをしている女子2人と、絡んできた男子が言い合いになり、男子は花を踏みつぶします。

 場面変わって大学3年生の春、お花見合コンの席。

 舞い散る桜の花びらを見て「舞ってる」と言っているうちに「待ってる」と言葉が変わり、赤ん坊を待ちわびている場面に転換していきます。母親に抱かれて帰った赤ん坊はそわそわした父親と、花を摘んできたお姉ちゃんに迎えられました。

 ふたたび小学校へ戻り、夏休みの水やり係の2人。男子2人が植物の受粉と人間の“受粉”の話をしていると、女子が「これ種になるよね。来年もまたお花が咲くね!」と最初に咲いた花を見つけます。

今度はお花屋さんでプロポーズ用の花を探す男性が現れます。花を贈ることについて店員とやり取りをする男性は、過去か未来か、不思議な時間の流れに飲み込まれて行きます。

最後、“じいちゃん”はお葬式をあげられています。

『みかんの花咲く丘』の手遊びをする姉妹は、じいちゃんの棺に花を入れました。

「ばあちゃん、泣いてる?」「急に昔のことをいっぱい思い出してね」。

孫たちが入れた花を手に持ち、じいちゃんは宙を見上げました。


あてのない家出という旅

2作目は『やじろべえ。』。春の日曜日、制服姿の中学生のキョウヘイは自転車を漕いで、いつもと違う道へ。

とりとめもなく浮かぶ記憶は、小学校3年生の教室へ飛びます。夏休み前の終業式の日、先生が川の向こうの学区外へ行かないように注意します。

川の向こうは怖いところではないことを知っている現在のキョウヘイは、ペダルを漕ぐうちにいつか見た景色に行き当たります。

 初めて家出をした日に見た光景でした。小学生のキョウヘイと姉は母親に叱られて家から締め出され、家出したのでした。

中学生になった今、あの日の家出と同じようにあてもなくさまよい、あの日の家出と違い自転車がある――この自転車は、母から与えられたお古の自転車です。

海に着き、声をかけてきたおばちゃんとおしゃべりします。お帰り放送が流れ、キョウヘイはおばちゃんから流木をもらいました。

冒頭のシーンに戻ります。今度、入院している母のところへ行き、自転車で海まで行ったこと、流木をもらったことを話そう。
母は呆れるかもしれないけれど、旅はどこに着くかわからないけど、今はその母の顔を焼きつけていたい――。

お客様の感想です。出演者の妹さんとお父様は「心配だったんですが、がんばっている姿を初めて見て安心しました」とほっとした表情でした。妹が出演しているという女性です。「初めて高校生の演劇を観て、レベルが高いと感じました。ひとりで何役も演じ分けているし、どういう人や関係かがよく伝わってきてすごいなと思いました」。

取材・文:くりもときょうこ

撮影:齊梧伸一郎