サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館)

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【レポート】ダンス作品兼演劇作品『ダンスの審査員のダンス』

読了目安時間: 5分

みる・きく
ダンス 演劇

ダンス作品兼演劇作品『ダンスの審査員のダンス』

開催日
時間
14:00開演
会場
サントミューゼ 小ホール

ダンサーと俳優、音楽家が挑む実験的でユニークな作品が上田にやってきました。成人の日の午後に行われた公演の様子をレポートします。

「審査すること」を笑いのめす

客席の灯りはそのままに、出演者が舞台に登場します。6つのソファと大きなローテーブル。富士山が映るモニターには、セリフが流れていきます。
2EZ2Dance(トゥーイージートゥーダンス)センセイ(入手杏奈)は、非公開の審査はリラックスしてできると言うと、紅天女(くれないあまめ)センセイ(中村恩恵)は非公開の審査の音声データが流出して炎上した審査員の話をします。ハルカナルタカミザワセンセイ(小林うてな)は、ダンスを踊っても褒められるのは振付家であることにモヤモヤすると言い、ダンスを気体・液体・固体という言葉で評する風林火山センセイ(矢澤誠)は「ダンスそのものだけ抽出するのは無理。にもかかわらずどうやってダンスを審査するのか?」と問いを投げかけます。一方、ピュアムーブメントセンセイ(酒井はな)は、「『美』と『美じゃない』にしたがってシンプルに審査したい」と断言。

と、ピュアムーブメントセンセイが「蜘蛛がいる」と突然言い出します。音楽も担当する小林さんが奏でるカリンバが、蜘蛛の動きを表現しているようです。踊りンゴセンセイ(島地保武)は「蜘蛛みたいに長い脚が8本あったら自分のダンスが根底から変わると思う」とテーブルの上で踊り始めると、蜘蛛に扮した小林さんとの「私にインスピレーションを得てダンスをつくったのだから、私の振り付けだ!」「振り付けの著作権料払えっていうゆすりですか?」というコミカルなやりとりに客席から笑い声が上がります。

ダンスの審査の話に入っていきます。「1組目の『入れ歯』は非常にかみ合っていた」「デュオのところがよかった」など、紛らわしいグループ名を連呼しながらセンセイ方が評していると、2EZ2Danceセンセイが「『入れ歯』にもっとグルーヴがほしい」と異を唱えます。
議論が白熱しはじめると蜘蛛が再び登場し、2組目に話は移ります。大きな物体を使ってダンスする2組目に「ダンスは抽象表現だからってそういうエクスキューズが嫌い」と吠える踊りンゴセンセイ。風林火山センセイが「私の言う液体と同じだ」と同調すると、2EZ2Danceセンセイが「液体って抽象的すぎて分かりにくい」と嚙みついたことで、「グルーヴ原理主義者!」「液体主義者!」とヒートアップしていきます。

表現・体・私を模索する

終盤、2EZ2Danceセンセイは踊りながら、ダンスする主語が私であることの違和感を語ります。「体を自分で囲わないでダンスする」ことを上手にできなくても、そうしようとする体を信じたいと、ダンス・体・私の関係性が示されました。

風林火山センセイが「言葉をしゃべることも同じ」で、言葉は私のものでも誰のものでもないと言います。大きなリコーダーを吹きながら「自由に巣を張っちゃったよ」と言う蜘蛛。「存在しない蜘蛛が張り巡らせる存在しない蜘蛛の巣」という2EZ2Danceセンセイの言葉に、蜘蛛と蜘蛛の巣はこれまでのやりとりそのものだったのかもしれないと気付かされます。演劇もダンスも音楽も「占拠」されてはおらず、私を「囲い込まなくても」私を享受できるという言葉には、表現・体・私がどこに属し、何から自由なのかという「所有」を超えるような力強さが宿ります。

メタフィクション的なやりとりの果ては、紅天女センセイの一言で幕引きとなりました。

お客様の感想です。
関連企画のワークショップに参加した佐久市在住の女性は、「それぞれのダンサーの個性が際立っていて、自由でフラットな感じを受けました。ダンスで普段言葉にしてはいけないようなこと、汲み取るだけだったことを言葉にしていて面白かったです」と話してくれました。
同じくワークショップに参加した上田市の女性です。「とてもいきいきした作品でした。客席側の視点に立つ時もあって、灯りがついたままの客席との境界が曖昧になって面白かったです」。

取材・文:くりもときょうこ
撮影:HATORI Naoshi
提供:愛知県芸術劇場 『ダンスの審査員のダンス』愛知公演ゲネプロより