【レポート】鳥羽咲音 サントミューゼ・ソワレ
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鳥羽咲音 サントミューゼ・ソワレ
日時 2026年2月25日(水)
場所 サントミューゼ大ホール 舞台上
ピアノ 鳥羽泰子
サントミューゼで2日間、ソワレ(夜公演)とマチネ(昼公演)を行ったチェリストの鳥羽咲音さん。1日目のソワレの様子をレポートします。
大ホールの舞台が客席になる、特別な夜
訪れたお客様が導かれたのは、大ホールの舞台の上。普段はオーケストラ奏者が立つ特別な場所が、今日のステージであり客席です。「普段とまったく違う視点をお楽しみください」という挨拶の通り、ステージから客席を眺める不思議な感覚。高い天井に沿って視線が自然と上に向かい、開放的な感覚です。
満席の客席に、チェリストの鳥羽咲音さんとピアニストの鳥羽泰子さんが登場。「今日はステージの上が客席。いつもと違った雰囲気で、演奏を楽しんでいただきたいと思います」と咲音さんが挨拶しました。

1曲目「ラフマニノフの主題によるメロディー」が始まると、音の伸びやかさに驚きました。オーケストラ公演に使われることが多い大ホールですが、大空間の隅々にまでチェロとピアノのピュアな音色が心地よく広がっていきます。一方で演奏者がすぐ目の前にいる親密な空間は、かつてのサロンのよう。華やかに、少し哀愁を漂わせて。その音色は聴き手の心をつかみ、演奏後は感嘆のどよめきが起きたほどでした。

続く「作曲者フォーレの心の陰影が表れている」と解説した「エレジー op.24」は低音が美しく響き、アルメニア人のハチャトゥリヤンによる「エレジー」は民族音楽のエッセンスを美しく優しい音色に昇華させているのが印象的でした。
夜にふさわしいソナタ、拍手に応えたアンコール
フランク作曲「ヴァイオリン・ソナタ」は、繊細な音色の第1楽章で幕を開けました。深みのある音に包まれ、客席も音と一体になるかのような感覚を覚えます。第4楽章は感情の機微を色鮮やかに描き出し、演奏する体とチェロが一体となって美しく重層的な音色を響かせました。演奏後は大きな拍手と「ブラボー!」の声、立ち上がり称賛を贈る人も。

ソワレに合わせて夜をイメージしたプログラムでしたが、アンコールは春の日差しのような多幸感に包まれる「モーツァルト『フィガロの結婚』幻想曲」を演奏。ドラマチックな「ヴァイオリン・ソナタ」と打って変わり、舞踏会のような心地よいリズムに心が躍ります。さらに「あと2分時間があるので、もう1曲アンコールを」と嬉しい言葉と共に、ヨハン・シュトラウスの「ロマンス」を。伸びやかで明るく、チェロとピアノの美しい重なりに魅了されました。

お客様に感想を聞きました。上田市からお越しの女性は「床を通じてチェロの音の振動が直に伝わってきました。客席では絶対に味わえない感覚です」。同じく上田市からお越しのご夫妻は「こんなに間近で演奏を聴けるのは貴重なこと。チェロはもちろん、鳥羽泰子さんのピアノも楽しみだったので嬉しかったです。また良い企画を期待しています」と話していました。
【プログラム】
アルトシューレル/ラフマニノフの主題によるメロディー
フォーレ/エレジー op.24
ハチャトゥリヤン/エレジー
フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調(チェロ版)
第1楽章 アレグレット・ベン・モデラート
第2楽章 アレグロ
第3楽章 幻想的な叙唱:ベン・モデラート
第4楽章 アレグレット・ポコ・モッソ
【アンコール】
オッフェンバック/モーツァルト「フィガロの結婚」幻想曲
ヨハン・シュトラウス/ロマンス
取材・文:石井妙子
撮影:金井真一